当時僕は、人の等身大の写真を撮るため小屋くらいあるサイズのカメラを作り(ピンホール)、写真で表現するような作品作りを中心に行っていました。しかしふと思ったのは「モノ作りと考えると飲食の世界も似ているな」ということ。一人でコツコツ作り上げるのが作品だとしたら、大勢で一つの完成されたサービスを作り上げるのがお店。これは面白いし、将来のためにも絶対役に立つと考えたわけです。
例えば芸術作品というのは誰にでも作れるものではないかもしれない。でも「こういう人もいる」「こういう考え方をする人もいる」ということを分かった上で作らなければ、単に独りよがりな作品を作るだけになってしまう。それなら趣味でやればいいだけです。年間何万人というお客様に接し、様々な考え方に触れる。5年後10年後もし作品作りに戻ったとしても、ここでの経験は必ず生きてくると思うのです。僕は作風が嫌いな作家でも、素晴らしいものを作り上げている人には関心があるし「スゴイな」と思う。やはり自分のスタイルを持っている人は周りへの観察力も持っている人。ここでの仕事はそんな感性も養えるのです。